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東香会らしさはここから始まる。新人研修2024【青山誠による保育の話】

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2024/04/30

2024年3月下旬に法人による合同新人研修を行いました。今回は、全6施設に配属された保育士・栄養士・調理師が参加する合同新人研修の中から、保育統括理事 青山誠の研修の様子をご紹介します。

*2023年の新人研修の様子はこちらでご紹介しています
新人研修レポート【前編】
新人研修レポート【後編】
新人研修レポート【特別編 理事長 齋藤紘良の話】

「遊びの地図」を描く自己紹介で自分の「子ども心」がみえてくる

青山誠(保育統括理事):
世界中どこで保育をしたとしても共通していること、それは「子ども」と「自分」です。
例えば、どこか別の国にいって環境を変えたとしても、結局そこに自分がいますよね。自分からは逃れられない。そして保育をやろうとすると、そこに子どもがいますよね。「子ども」と「自分」というのを外さないでみんなで保育をしていけるといいなと思います。

皆さんがこれから色々な職場の同僚や職域が違う人と対話をすると思いますが、東香会は職員みんなで子どもに関わるので、保育士だけが保育をするわけではないのです。その基本はどの職域でも一緒なので、みんなでディスカッション等も交えながらやっていきたいと思います。

まずは、自分の子ども時代の遊びの地図を描くワークショップをやってみましょう。
私の自己紹介も兼ねてしゃべってみますね。(地図を見ながら)

うちは実家が布団屋です。商店街にずらーっとお店があって、隣がおもちゃ屋でした。すごく親切なおじちゃんとおばちゃんで、ここでおやつもらったりしていたんですけど、ある頃からおもちゃ屋で花火を売るようになったんです。いわゆるロケット花火ね、それをおもちゃ屋に向けて放つっていうことをしまして…出禁ですね。
あとは、ここは靴屋なんだけど、19時くらいになるとおばちゃんがめちゃくちゃ酔っ払うんです。酔っ払いながら店番してて、酔っ払った大人がちょっと怖いっていうか。なんか大人って、普段は優しいのにいろんな顔するんだなっていうことを感じたりしました。
ここの店は綿菓子機があって、昔の綿菓子機っていうのは自分でざらめ入れてやるんですけれど、昭和はそんな感じです。ここに美容室があって、ここの上が集合住宅です。
この駅の周りは高級住宅街だったんだけど、商店街に住んでる僕らは、要は貧乏です。貧乏と裕福な子たちで何が違うかというと、帰宅時間が違う。高級住宅街の子たちは大体17時ぐらいに帰る。ところがこっちは実家がみんな店で営業が終わるのが20時なんです。だから17時から20時の間、この辺りの悪ガキたちだけでいろんなことをして過ごしました。

学校は割と好きだったんですね。僕は大好きだけど、学校は僕のこと嫌いだろうなってずっと思っていました。まずランドセルを無くしてね。アリンコを眺めていたらお昼になっていた、みたいな感じで学校に辿り着けない。そういう子どもでした。
青山くんがいるクラスはなぜか教科書が進まないとも言われていました。だけど、僕は学校がすごく好きでした。そういう子ども心をとても覚えています。大人は自分のことをどう見てるかなって子どもってけっこう繊細に見ます。一瞬で見抜くけど、とにかくそういう子で、自由に過ごしていましたね。

まち・ひと・しぜん さまざまな環境や物事が、豊かな子ども心を育んできた


Mさん:
私は家が4軒ほど並ぶ場所に住んでいていて、隣近所にUさんというご夫婦が住んでいました。Uさんはとても優しかったので、私がうちでお母さんやお父さんに怒られるたび、転がり込んでおやつをもらったり慰めてもらったりして、クールダウンしていました。そのおうちの木に鳥の巣があったので餌をあげたり、犬を飼っていたので一緒に戯れたりしました。
自宅には山椒の木があって木にアゲハチョウが毎年来るので、それを育てたり、自宅から出た場所にある田んぼでオタマジャクシを捕って家で飼ったりしていました。

Mさん:
私は郊外の住宅街に住んでいました。小学1年生から3年生まで学童に行っていましたが、その後は家で過ごしていました。家にいる日は犬と一緒に遊んだり、外に出る日は小学校や友だちの家に遊びに行ったり、近くに集合住宅があって小さい子どもたちがたくさんいたので、そこで自分より年下の子どもたちと遊んだりしていました。
通っていた小学校や保育園も近くにあって、夏のお祭りの時にその前を通ると、担任をしてくれていた先生が「元気〜?」と声をかけてくれたりしていました。

青山:
親子って縦の関係になりやすいけど、親子関係だけではない多様な関係性、いわゆる斜めの関係があると子どもにとってはときに逃げ場所になったり、息抜きできたりします。それが今、保育園で子育て支援という形になってきていて少し固いけど、大人を知れるというのがすごくいいなと思っています。
子どもは登場する場面によって人柄とか関係性が全然違いますよね。こういう場所・ことがいくつかあるという事は子どもにとってすごく重要な気がします。

例えば、学校でいろんなうるさいことを言われて帰ってきたときに、親が小学校の出先機関になってはいけないと思います。小学校で散々言われていることを家でもちゃんとやりなさいと言われたら、逃げ場がなくなってしまいます。

東香会ではいわゆる「発表会」は行わないですが、子どもは4歳くらいになると、おうちの人に発表会等を見に来てほしくないと言うことがあります。これは社会的な自己が育ってきているから、家での自分を知ってる人に外での自分を見られるのが恥ずかしくなるから。おうちの人が嫌なんじゃないんです。社会的な自己が育ってるんだよっていうことが多くあります。

自立ということも大きく勘違いされていますが、自立というのは依存しないことではない。実は自立というのは、大人も子どもも依存先の数が多いこと。依存先の数が少ないと依存度が深まってしまうから、その人に嫌われたら生きていけない状態になってしまいます。

だから保育者は多様でいいと思います。正しい保育者を目指すよりも、自分らしい保育者を目指した方が子どもにとっていい。だって子どもは勝手に選ぶから。自分だけで100%完璧な保育者を目指すなんて無理だし、それは子どもにとっても良くないと思います。完璧な保育をするんだったらAI搭載した保育ロボットがいたらいい。保育ロボットには多様性がないから、やっぱり人は人が育てたほうがいいんじゃないか、と思います。

しぜんと社会と子ども心を持ち合わせた自分が混ざり合う世界の中で
子どもたちと同じ目線で過ごしていく保育

Kさん:
私は小学生の頃は田舎に住んでいて、周りに田んぼとか山しかなくて、遊ぶ場所は公園というよりも田んぼとか山とかで遊んでいたので、よく人の家の田んぼに入ってタニシとかを集めてつぶしてみたり、山を登って遊んだりしていました。
水泳を習っていたのですが、体力をつけるために山に登るときは重りをつけたりして、今よりも活発に動いていました。学校までは歩いて20分くらいで距離が長いので、石を蹴りながら行って学校までどっちが大きさが残るかというような競争をしていました。
家は田舎なので敷地が広くて、近所の子たちが集まって野球とかドッジボールとか家の敷地内でやったりしました。年上の近所の子が塀に登ってジャンプしてるのを見て、自分も真似してジャンプしたりもして。高いところが好きでした。

青山:
子どもって危ないことや汚いことをする。それから悪いこともしますよね。でもその「悪い」って、何に対して「悪い」のか。いわゆる「先生」と呼ばれる人は、子どもの行動を「正しいか正しくないか」で見がち。その評価から、子どもの行動を「悪い」とみなしがちです。

でも子どもって「正しいからやる、正しくないからやらない」わけではなく、ついやっちゃうとか、やってみたいとか、まずはそういう情動のなかで生きているわけです。だんだんと大人になるにつれて社会的な存在になっていく。社会の周りに実はもっと大きな世界って広がっていて、自然の周りにはタニシがいたりとか山椒の木が植わっていたりとか、世界のなかに社会が、浮島みたいなものとしてあるわけです。だから、先程のことでいえば、AIよりは人が人を育てたほうがいいんだけれど、一方で人は人だけでは育たないと思うんですよね。人だけで人を育てようとすると、うっかり、既存の社会に子どもを合わせようと育ててしまいかねないから。

社会より広い世界のなかで育っていって、だからこそ社会に対しても相対的な見方ができるんだと思います。次の社会はどう在るべきかと考えることもできる。

今の社会の寸法に子どもを合わせて、そこで生きやすくすることが保育や教育だったら、ただ適合するプログラムを子どもに入れてるのと一緒でつまらないですよね。
だから保育には可能性がすごくある。でもそれは実は皆さん遊びの世界で経験してきたこと。いま皆さんがこれから関わる子どもと一緒に経験することが、次の社会を作っていくことになると思います。


この子ども時代の自分の感覚を、ぜひ忘れないでほしいと思っています。ここからたくさんのことを学び、経験も積んでいかないといけない。そういう部分もありますが、それをやるのはさっき言った「自分」。この感覚はそれぞれ人によって違います。

たとえば一人遊びをする子がいたとします。保育者になったとたん、一人遊びをしていた子ども時代の感覚を忘れちゃう人がいるわけです。その様子を見て「みんなと混ぜないといけないから、みんなで仲良く遊びましょう」ということではなくて、一人でポツンとしている子を見た時に、やりたいことがあって一人遊びをしているのか、嫌なことがあって一人遊びをしているのか、一人でいる子がどんな状態なのか推し量って「その気持ち、分かるわ〜」っていうのが子ども心です。一人で抜け出したい子をみて「いってらっしゃい」と安全上は言えないけど、「次どこか行きたいなっていう時は僕も一緒にいさせてくれない?抜け出したいのは分かるけど、一人で行くとこっちも心配だから一緒についていっていい?」とか。ただの対応として「ダメだよ」と言うのとは中身がまるで違います。

「ゲド戦記」を書いたアーシュラ・ル・グゥインが「子どもが死んで大人になるんじゃなくて、子どもが生き延びて大人になる。全て大人の中にある優れた能力は、全部子どもの中にある」と言っています。ファンタジーでも、保育でも、自分のなかにある子ども心が生きて働いているってすごく重要なことだと思いました。

今日、皆さんに子ども時代の遊びの地図を書いてもらい、それぞれの「子ども心」を話してもらいましたが、いろんな子どもたちが皆さん自身の中にいて、豊かに生きているわけです。それを、保育につなげてほしいと思います。


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