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東香会らしさはここから始まる。新人研修2023で見たこと、聞いたこと、感じたこと【特別編 理事長 齋藤紘良の話】

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2023/05/08

2023年3月中旬に新人研修の中で、理事長 齋藤紘良から新しい仲間たちに語られた話の一部をご紹介します。
新人研修は、子どもや大人の私たちにとっての「人権」についての話から始まりました。

新人研修レポート【前編】 / 新人研修レポート【後編】

東香会の理念「すべて子ども中心」

普段の生活の中で「人権」について考えることは少ないと思いますが、自分の意見を出して、それが認められる安心感こそが人権の基本です。現在の社会情勢や政治の中でそれが実際にどうなっているかは…ですが、本来はそうあるべきことです。

東香会の理念は「すべて子ども中心」です。最近、巷で言われている「子どもファースト」とは少し違います。社会の中心に子どもがいること。そして、それが当たり前だと捉えられている状態であることです。

子どもと大人、みんなが寄り合って社会を作っていく、そこから話し合って、それぞれの意見を認め合えば、私たち東香会の意思や行動は社会に深い影響を与えていけると思います。みなさんにもこれから実感を持って取り組んでいってください。

保育を仕事として捉えない

東香会は1978年の法人設立以来、社会の動きに合わせながら福祉事業に携わり、その時折の課題をリサーチして社会貢献に気持ちを向けてきました。
2023年からは、公益事業の一つとして研修事業(保育セミナー「うたげと初心」)に注力していきます。これまで東香会内部でおこなっていた研修や勉強会を外にも開き、共に学び合う場を社会へ提供します。

親が「子育て」を、保育者が「保育」をするという昨今の社会の区別には行き詰まりを感じます。私たちは保育の専門家ですが、保育は専門家だけの仕事ではありません。
最近のニュースでは、保育士による虐待や置き去りなどの事件が多く報道されています。責任や原因、改善策についてさまざまに報じられていますが、社会が保育を「仕事」としか捉えなくなっていることも問題です。

そうはなってほしくない、それは違うと言いたいのです。保育は仕事だけではなくて、人間関係や社会の構築そのものであることを伝えたい。
「支え合って生きていこうぜ、人類!」個人や保育者だけで子どもを育てられないなら社会で育てていこうと、人類はこれまでも社会の中で互いに助け合って成長してきました。私たちはその歴史を知り、さまざまな分野や立場の人と交流しながら、共通の言葉を見つけていきたい。

これが、東香会が外部に向けて研修事業を始めた理由です。保育者だけでなく、建築家やコンビニの店員さん、有名人でも、広く多くの人が保育に携わって言葉を交わして、子どもと大人が育つ社会になることを願っています。

社会福祉法人とは何か?

「社会福祉法人」は、普段の生活の中ではあまり耳にすることが少ないかもしれませんが、文字を分解してみると、「社会福祉のための法人」ということであり、「法人」とは法律によって「人」と同じ権利能力を与えられた組織ということになります。
社会福祉法人は厚生労働省の所轄であり、社会福祉事業の他にも公益事業や収益事業を行うことができます。


東香会における社会福祉事業は、主に保育園やこども園、学童の運営がこれにあたります。
また、地域の妊娠中の方や子育て中の親子の交流促進や育児相談を行う「地域子育て支援拠点事業」(子育てひろば)、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児の一時的な預かりをする「一時預かり事業」も、社会福祉事業として実施しています。

公益事業として、先にお話しした研修事業(保育セミナー「うたげと初心」)を2023年度より実施します。他にも、地域に向けた家族食堂や、渋谷で運営しているsmall alley cafeも、地域における公益的な取組みとして運営しています。

このように東香会はさまざまな事業を通じて社会福祉に貢献している法人です。保育士に限らず、さまざまな人と地域、社会と関わり合いながら運営していて、新人のみなさんもそこに属しているということを是非、意識してください。

子どもの人格について

子どもは大人に比べて身体が小さいので、大人は子どもを支配できると思いがちです。しかし、大人自身が自分の身体や感情をコントロールすることも難しいわけで、他人をコントロールするのは不可能なことです。

子どもの発達について「2歳児はこう、5歳児はこう」と、大人である保育者は子どもを自分の知識に当てはめて考えてしまいがちですが、目の前にいる子どもはそれに当てはまらず、大人がコントロールすることができないのです。
しかし、お願いすることはできます。保育者として自分の意思をしっかり持ちながら、子どもの意思に寄り添うことが大切です。

人間は誰しもイライラするタイミングもありますが、それを自覚して保育に臨まなければなりません。子どもの中身を見る目を持つことができれば、自分と子どもを照らし合わせながら同じ地平にのっている付き合い方ができるはずです。

例えば、外遊びをしていて、それ以上行ったら危ない時や、友達に暴力的なことをしていたら止めます。それは社会生活の中で止めないと不幸な結果が訪れてしまうことがあるからです。
どこからは止めた方が良くて、逆に止めると良くないのかを判断できなければなりませんし、暴力的なことをなぜするのか、その背景にある意志を感じ取る必要もあります。


大人は、ついこうあってほしいと思いがちですが、もう一つの可能性は、その子どもと一緒に明日を考えることで生まれてきます。「今日はこんなことがあったから、明日はこうしよう」と考えてみることです。言いすぎたなと感じたらば謝れば良い。うまくいかないことがあれば、次は改善すれば良い。次があるからこそ保育はできるのであって、全て正しい保育はできません。
「こうした方が良かったかな…」と省みたら、次に向けて行動する中で、お互いの関係を築いて、関わり方を見つけていけば良いのです。

新人のみなさんも、年月を重ねてライフステージが変わると保育や子育ての見方が変わったり、経験を積んでベテランになると現在とは全然違う保育をするようになるでしょう。
4月から始まる保育では、どんな視点で子どもたちや物事を見るかが大切です。自分の感じたことを大切にすることで、「私もあなたと同じだったよ」と、来年の新人にも自分の行動で伝えられるようになります。

子どもの人権について

「人権」という言葉を聞くと身構えてしまうかもしれませんが、難しいことではなく、自分たちに照らし合わせればとても身近なことです。
保育者にとって子どもたちの人権を守るということは、同時に子どもたちからも大人である自分たちも認められている状態があってこそ成り立ちます。 

保育者が子どもを守ってあげていると一方的に思っていると、子どもが大人にとって嫌なことをしたら、「守ってあげているのに、なんでそういうことするの?」と怒ってしまうかもしれません。でも、それは大人(保育者)が上で、子どもが下という間違った認識で、そこには相互関係がありません。二人の間にはお互いに信頼や感謝が必要です。

人権を尊重する保育を続けていくためには、子どもと大人との相互関係が不可欠です。子どもたちがいてくれるから、わたしたち大人は保育者として働き、保育の喜びを感じることができるのです。この相互関係を忘れないで保育をしてください。

また、職員のみなさんと法人(東香会)との関係も相互的であるべきです。法人は「雇ってあげている」のではなく、みなさんがいるからこそ東香会の保育が安心して続けられているのです。


社会人が直面することは、想定外と板挟み

新社会人が社会に出て直面することは、「想定外と板挟み(via教育社会学者の鈴木寛さん)」に向き合うことです。
二人の先輩がそれぞれ違うことを言ってきたり、子どもはこうだと主張するけれど保護者は「それは違う」と言ってきたり。異なる視点の間で揺れ動いてどちらの意見を採用して進めていくべきかを迷うことが増えてきます。

この状態に耐えきれないと心も身体もダメージを受けてしまいます。すべて混ぜ合わせて考えてしまうと辛くなるので、そこでは自分の目線に立って行動を決めることが大切です。
自分にとって想定外のことはたびたび起こります。そこで板挟みになってしまっても、自分の目線に立って情報を集めて行動する。正しい解決方法はなくて、目の前で起こっていることが全てです。そうやって想定外の状況での行動から「想定内」が生まれてくるのです。

常に新しい情報に目を向けてみてください。毎日、同じニュースサイトや番組ばかり見ていると、自分の考え方に偏りが生じます。視点を変えれば、それまで自分がそうだと決めつけてきたことに、違った見方をしている人がいることに気がつくはずです。
その経験を重ねることで、「自分自身で悩みを滅する」ことができるようになります。

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