目には見えない「枠」がとれたら、出会える子どもの姿が変わってきた 「子どもの思いに近づく」ために起こした「大人」側のアクション
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2024/12/25
ののはな文京保育園は、0〜5歳児まで160人の子どもたちが通う相模原市の認可保育園です。小田急 相模大野駅からバスで5分ほどの住宅街にあります。2年前の園長交代時から「子どもの思いに近づく」を合言葉に、保育の見直しを行い、日常的に使う呼び名や役職の名称をフラットな言葉に変えたり、職員同士が対話をする機会を意識的に増やしてきました。また、子どもたち同士も安心して対話を重ねられるようミーティングする場を設けたりとさまざまな変化が起きています。
そんな中、日々保育を行う1才乳児担当職員に、現在の「ののはな保育園」の変化についてインタビューしました。
プロフィール
あんどー さん
2017年4月に新卒で東香会に入職。
これまでののはな文京保育園で0歳〜5歳クラスの保育を担当。マネージャー2年目。
現在は1歳児クラスを担当。
趣味は、音楽を聴く、自然がある場所にいく、買い物など。
■ののはな文京保育園に興味をもったきっかけは?
高校生のときに進路について考えて、漠然と「子ども」に興味があるなと思い、大学で保育を学びました。ののはな文京保育園を知ったのは、学生時代の実習先だったことです。ファッションも好きだったのでアパレル関連の会社も就職先として検討していたのですが、実習時の楽しかった思い出が思い浮かび、ののはな文京保育園へ新卒で入職しました。あとは自分は少人数よりも多くの人がいる職場の方が向いているのではと思い、人数が多い職場であることも決め手になりました。
■乳児の保育は、大人の影響が大きい。
だからこそ「子どもの思いに近づく」保育の環境づくりを大切にしたい。
私は今保育士7年目で、ここ数年は0〜1歳の乳児を担当しています。乳児は言葉がまだ未発達なため、保育は大人の意志の影響を大きく受けやすいと感じていました。例えば、「まだ遊んでいる子もいるけれどお昼ごはんだから、片付けをはじめしてしまおよう」とか、子どもの思いを超えて大人が流れを作ってしまったり。
「子どもの思いに近づく」を園の合言葉に据え、保育統括の青山さんと園長の野﨑さんが中心となり保育を見直し、ののはな文京保育園の保育が変わり始めました。
自分の中では、保育が変わっていく中で、現在もやってみたい環境づくりを行っているところです。この一年の取組みは自分自身の乳児保育のベースにもなると思っていて、やりがいを感じながら保育をしています。
■名前の呼ばれ方が変わったら「遊び」も「働き方」も自由な方向に変化してきた
まず、変化してきた中の一つの要素として、保育者の呼び方が「先生」だったのが「あんどーちゃん」に変わりました。今までは「先生」として指導することを求められている感じがして、自分は「先生」タイプではないと思っていたので「先生」と呼ばれることが苦しい時期もありました。
今は指導する人ではなく、一緒にその場を作っていける人、そして子どもたちの気持ちを知り、その子がやりたいことを一緒に考えられたりとか、一つひとつ子どもと一緒の世界で積んでいける存在になれている感覚です。
遊びについても、今までは就学に向けて集団で保育を行う場面が多かったように感じていましたが、呼び方の変化と共に、子どもの隣に一緒に居る、空間を共にするような人であることを大切にするようになり、子どもたちとの関わりや遊びも変化していきました。今までだったら、大人が前に立ってみんなで一緒に制作をしたり、園庭では三輪車に乗る等の遊びが多かったように思います。昨年保育が変わったタイミングで、グランドのように平坦だった園庭の真ん中に、保護者の方の力もお借りして大きな築山を自分たちで作りました。そうすると、登る滑るだけでなく築山のふもとで泥遊びに夢中になったり、公園から集めてきたたくさんの落ち葉でふかふかの空間を作って居場所にしていたり、子どもの姿もガラッと変わったと感じています。子どもがやりたいことが溢れてきて、それを大人も一緒に楽しめるのが、子どもがいきいきしていていいなと思っています。
保育の変化は大きな変化ではありましたが、前向きに変化してきています。例えば「壁は登ったらだめだよ」とか「廊下は走らないでね」など、全てをルールで統一するのではなく、今ならこれができるかもね、私がここで見てるから登っておいでよ等と状況判断的にできるのが、楽しいし、子どもと一緒に遊べるという感覚が増えたと思います。
働いている職員も「先生」として肩肘はらず、自分を受け入れてもらえる場所になったのがいいなと思っています。子どもからも大人からも「あんどーちゃん」と呼ばれることで「あんどーちゃんってこんな人だよね」という、個性をわかってもらえている感じがします。
今までは「先生」としてレベルをあげないといけないと感じていた見えない「枠」や「括り」のようなものが、「あなたはあなた」と受け入れてもらえると感じています。子どもたち、周りの職員、自分自身にも受け入れられている感じが心地よく、園が緊張しないで居られる場所になっています。それでも保育に関する悩みはつきないから同僚にも相談しますが「先生」として気負わないだけで、気持ちも楽になりましたし、物事の一つの正解を見つけるのではなく、今の悩みに対しての最適を繰り返し考えていこう、と考え方も変化しました。
■大人が思っていた凝り固まっていた部屋の環境を、思い切ってとっぱらってみた
今年度、保育室を大きく変えました。これまでは園庭側のフローリングの空間でごはんを食べる場所、部屋の奥の畳の空間が遊ぶ場所でした。子どもの1日の流れをみていくと、園庭から戻ってきて遊びの続きをするには、食事の場所を通って畳の空間に移動する流れになっていて、子どもたちの動きが食事の場所で遮断されているように感じ、子どもの動きと空間がフィットしていない様子に違和感がありました。
1歳児は目の前に入ってくる情報で、その後の遊びが変化しやすい年齢と感じます。例えば、目の前にごはんを食べる空間があると、目に入った場面で急に遊びが続かなくなったりします。
そこで、食事の場所を奥の畳の空間にしたら子どもの気持ちや動きを不用意に止めることなく過ごせるかなと思い、クラス会議で事例をもとに声をあげて、他の職員に聞いてもらいました。今の空間は、子どもにとっても大人にとっても満ち足りないものがあるなら、やってみようということになりました。
実は、去年も同じ空間で保育をしていたので、ずっと気になっていて、空間を少しずつ変えたりしていましたが、自分の中で頭が整理できない時期が続いて、自分の中で解決の緒をみつけられないでいました。
園長の野﨑さんに、雑談の中でそんな自分の状況を相談すると「クラスのメンバーに相談してみたら?」とアドバイスをもらい、自分の思いを文章にしクラス担当に投げかけてみました。ゼロから皆で考えたいと思い、自分の思いと事例を投げかけてみたら、私以外の職員も心の中で思っていることがあるとわかってきました。
それで、思いきって部屋の模様替えをやってみようということになり、柱を立ててみたり、畳だから食べる場所にはできないと思っていましたが畳にフローリングシートを敷いてみたりしました。大人が思っていた凝り固まっていたものを一回とっぱらってみたら開けてきたことはとても大きかったと思います。
1歳児の部屋の様子
【BEFORE】奥の畳の空間は、コーナー設定されているが、確立されているのはおままごとくらいだった。園庭側のフローリングの空間は、だだっ広く、食事のときに机を出していた。
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【AFTER】奥の畳の空間にフローリングシートを敷き、食事スペースに。園庭側のフローリングの空間は、遊び込める空間に変えた。また、子どもの視界をあえて遮れるように家具を配置した。
部屋の環境が変化すると、子どもたちが、遊びだけではなく自分の居場所を見つけているんだと思うようになりました。大人が見て思う遊びではなく、子どもにとっては保育園は生活の一部だから、その場にいることが、何かしていてもいいし、しなくてもいいし、というのが、その子らしく空間に合わせてみえるようになったかなと思います。
自分たちが過ごす空間だから、やっちゃえばいいじゃん!という職員みんなの勢いも、とても心強かったです。1歳児クラス以外の他の職員も面白そうだねと快く協力してくれて、一晩で部屋の改造が終わりました。保育は一人でやるものではなく、一つの場面でも思うことは人それぞれ違うので、一人で全てわかっていなくても、分かち合い考え合える大人同士の関係が大事だと改めて感じました。
■これから、やっていきたいこと
「自分がその時の感情のままの自分で居る空間づくり」をできたらいいなと思っています。園庭改改造と同じで、室内の居場所を、家の続きのような心地いい雰囲気づくりや、園庭と室内で地続きになる遊びがつながる空間づくりをもっと進めていきたいです。いま1歳児担当として、空間づくりからの子どもたちの様子や遊びの変化を目の当たりにしていて、クラスごとの活動ではなく、子どもたちが異年齢で流動的に1歳の部屋で遊んだりすることも自然に起こっているので、どのクラスの子も自然にまざって一緒にいることも、空間づくりを通して考えていきたいです。
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