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フランスから視察団がやってきた。東香会の保育とルーツを体験

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2023/06/12

2023年5月下旬、フランスから15名ほどの視察団が東香会を訪れました。パリを中心に在宅保育事業所を展開している子育て事業の経営者/起業家たちが、日本の乳幼児保育及び教育がどのように運営されているか知りたいという目的で、東香会はフランスの首都パリと環境が近い都心の渋谷東しぜんの国こども園と、郊外の東京都町田市にあるしぜんの国保育園の二拠点をご案内いたしました。

フランスの幼児教育制度
フランスの幼児教育制度は、子どもの発達と教育を支援する包括的アプローチであり、0歳から6歳までの子どもに質の高い保育と教育を提供することを目的とし、養護的で刺激的な環境の中で子ども全体を育てることに重点を置いている。また、公共と民間の組み合せによって普遍的にサービスが提供できることを目指している。主に4タイプで構成される。

1. 母子保健サービス(PMI)
母親と6歳以下の子どもの保健サービス。健康診断/予防接種/健康教育など。
2. 託児所(Creches)
生後3カ月から3歳までの子どもを預かる保育施設。通常午前7時30分から午後7時まで開園。子どもたちが安全に遊び、学べる刺激的な環境を提供している。
3. マテルネル
フランスの正式教育の第1段階で3歳から6歳の子どもが対象(海外の幼稚園に相当)。社会性や情緒の発達、基本的な読み書きや計算の能力に重点を置いている。
4. ナニーとチャイルドマインダー
子どもの自宅で保育サービスを提供する個人。自治体に登録。保育品質保証のため一定基準で規制されている。

保育園や幼稚園に通うことが一般的な日本に対して、フランスでは上記 4. のように保育スタッフが自宅に訪問して保育することも多いという。その背景や要因について視察団へ質問したところ、フランスには多様なライフスタイルを認めるパートナーシップ制度があり、結婚や離婚に対する社会的価値観も変化しており法律的な結婚を選択せずに同棲するカップルで子どもを育てることが増えているとのこと。同棲を解消した後に、共同親権でそれぞれの親の家を曜日ごとに行き来する子どももいて、在宅保育事業のプロスタッフが両方の家に出向いて子どもの心身の成長をサポートする役割を担っている。
また、サポートの範囲は生活支援から学習や食事の栄養管理など多岐にわたり、その品質を高めていくために日本をはじめさまざまな事例を学んでいるとのことだった。

今回は、毎年67万人以上の個人や家族をサポートしているFEDESAP(フランス パーソナル&プロキシミティ・サービス連合会)と協力して企画された国際調査ミッション「Exploration Tokyo: Enriching the Future of In-Home Childcare 家庭内保育の未来を豊かにするために」の一環として東京を訪問。約1週間にわたり自治体や教育サービス企業を視察し、最終日の保育所視察として東香会を訪れた。

渋谷で都市型の保育施設を体験

渋谷東しぜんの国こども園は、海外の方にもよく知られている渋谷スクランブル交差点から歩いて行けるエリアにあります。1階には子育てひろばをはじめとした地域活動を行うBUTTERと公益サロンsmall alley cafeがあり、2階3階が保育施設になっています。

フランスの視察団が到着すると、子どもたちがフランス語で挨拶しました。この日のために伝えたい言葉を翻訳して調べたそうです。おかげで、視察団の皆さんも笑顔になり、和やかな雰囲気で視察が始まりました。


子どもたちの午睡の時間の訪問だったので、そろりそろりと静かに施設内を巡りました。視察団の皆さんは、同時翻訳される説明に熱心に耳を傾けていました。「何人の子どもたちに対して、何人の保育士が担当しているのか?」などの質問がありました。フランスでは珍しい保育施設内で給食を作るオープンキッチン、渋谷の街全体を園庭と捉え日々歩きながら発見と豊かな経験を重ねる活動 「まち歩き」の様子の写真展示、子どもたちが制作した作品にも目を留めていました。


「渋谷東しぜんの国こども園」の子どもたちの日々や地域活動については、Instagramでお伝えしています。

渋谷東しぜんの国こども園の見学後、大型バスに乗り込み高速道路を通って都心の渋谷から郊外の東京都町田市にあるしぜんの国保育園へ移動しました。バスの中では、理事長 齋藤紘良による東香会の運営についての説明がありました。フランス視察団の皆さんの関心は広く、法人の運営/職員の育成/保護者との関わりや、「何があなた(齋藤)をユニークにしているのか?」という哲学的な話題まで多岐に渡り、「子どもにスマホを使用させても良いものか」など国を超えた子育ての課題にも触れました。


町田で東香会の原点と禅文化に触れる

東京都町田市にあるしぜんの国保育園は、里山の斜面に立地し、遊歩道のようなスロープが各部屋や多様な活動の場をカーブを描きながら繋ぎ園庭まで下る構造となっています。見学は0・1歳の乳児室前からスタートし、スロープの途中で子どもたち、大人、お迎えで居合わせた保護者の方々とさまざまな交流が生まれ、コンセプト のsmall village(小さな村)を体感しながら、園庭までおりていきました。


園庭では、先ほど降りてきた緩やかなスロープと建物を下から見上げ、あらためてその形状と空間の繋がりに興味を示していました。園庭の真ん中にある「ひびき山」にも「これは何?何のために作ったの?」と質問が集まりました。

さらに、東香会の始まりの場所「きゅうえんしゃ」へと移動しました。
「きゅうえんしゃ」は、1979年から2014年まで子どもたちが過ごしてきたかつての園舎です。新園舎への移転に伴い、近年は冬眠のようにお休みしていましたが、ご家庭で子育てをされている方に向けた「子育てひろば」と地域の「しぜんの国食堂(こども食堂)」として、2022年10月から再活用が始まりました。


視察団の皆さんはリラックスした様子で職員特製のおやつを召し上がり、きゅうえんしゃで和やかなひと時を過ごしました。

当日は雨が降っていましたが、里山の自然を体感していただくため、傘をさして森を歩きました。きゅうえんしゃからは理事長 齋藤紘良が副住職を務める簗田寺(りょうでんじ)へと小道がつながっています。途中には茶室や歴史的な池などがあり、雨に濡れてますますみずみずしい新緑の中、日本らしい景色を体験していただきました。


簗田寺では本堂で鐘を鳴らし、禅の一端に触れ、簗田寺の自然を採集しお香を創作している「まとい」で手作りの香りを体験し、簗田寺の横に2023年春にオープンした「CONZEN COFFEE」で店主が焙煎した豆で淹れたアイスコーヒーを楽しんでいただきました。


フランス視察団のディレクターからのメッセージ—
This contemporary nursery, with its long history, fosters organic relationships between children and adults. The philosophy of placing children at the center of attention and creating a lively and animated environment resonates deeply.
「長い歴史を持つこの現代的な保育園は、子どもと大人の有機的な関係を育んでいることが視察を通じてわかりました。子どもを中心に据え、生き生きとした環境を作るという理念が心に響きました。」


東香会の見学をご希望の法人や団体の方は、東香会お問い合わせフォームよりご相談ください。なお、視察にあたっては視察料を戴いております。