ウェルビーイングな未来のために、創造的思考で子ども中心の社会づくり〜東香会理事長 齋藤紘良 ロングインタビュー2023 episode 1
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2023/03/29
「いまの子どもを観て20年後の社会を創造しよう」
そう遠くない未来20年後の社会がどうなっていたら良いか思い浮かべてみてください。子どもたち、家族や自分はどのように暮らしているでしょう?
子ども時代は誰しもが持っている創造的思考は、大人になってからも大切なもので、社会をより良くするきっかけが詰まっています。
大人は保育を理解することで子どもの世界を解像度高く理解できます。
保育は子どもと社会のつながりの始まりの地点です。
まずは、保育を知ることから一緒に始めましょう。
〜理事長齋藤紘良のロングインタビュー。今回はepisode 1として、創造的思考で子ども中心の社会をつくる その真意と、2023年に東香会と齋藤紘良は何をどう実践していくかについて尋ねてみました。
最近の保育に関わる世の中の話題は、バスでの置き去りや虐待の事件、保育現場の労働環境などがニュースやワイドショーで取り上げられて、「保育危機」「崖っぷち保育」とも言われてしまっています。東香会でもそれらの課題に気を配り向き合っていますが、本来は、「保育や福祉の豊かさ、面白さ、子どもと共に生きることの価値」がニュースで語られる2023年になって欲しいと願っています。
東香会の保育現場ではその理想が実現できていて、日常の中には魅力的で嬉しくなる子どもたちのエピソードが溢れています。そのことをもっと社会に知ってもらい、共感の輪を広げていきたいです。子どもたち、保護者、保育者、それを取り巻く地域の人々、そして世の中へと共感の輪が広がることで「子ども中心の社会づくり」へとつながっていきます。
「子ども中心の社会づくり」が実現すると、社会は充足感に満たされ幸福度の高い状態になり、ウェルビーイングな未来が実現します。さらには、それを保育から地域活動へと広げていくことが東香会とわたしの役割です。これからの文化や生活の可能性の中心に、まず子どもの存在があることが大切であり、「子ども中心の社会づくり」を実現させるキーワードの一つが「創造的思考 Creative Mind」であると考えています。
齋藤紘良 Saito Koryo
1980年生まれ。しぜんの国保育園などを渋谷/世田谷/町田/相模原で運営する社会福祉法人 東香会(とうこうかい)理事長。寛永6年(1629年)に建立された簗田寺(りょうでんじ)の副住職、楽曲提供やバンドCOINN(コイン)で活動するプロミュージシャンなど多彩な顔を持つ。町田の里山地域で500年続く祭りの創造、精進料理レストラン、宿坊、花屋、カフェ、お香ブランドを通して地域の豊かな文化を創造。全国私立保育連盟研究企画委員、和光高校「保育と教育」非常勤講師(〜2023年)大妻女子大学家政学部児童学科講師(2023年〜)
現在、最も関心があるという「創造的思考 Creative Mind」。その考えに至るこれまでの自身と法人の経緯をはじめに聞かせてください。
わたしが、しぜんの国保育園(東京都町田市)の園長になったのは、いまから12年ほど前の2011年のことです。そのころのわたしは従来の保育への違和感や問題を感じながら目の前の現実に向き合うけれど、職員の仲間にも理解されないままの孤独な戦いが続いていました。わたし自身も「日本の保育は発展途上」という恥ずかしい思い込みをしていました。そんな状況のころから現在に至るまでひたすら取り組み続けてきたことは「すべて、こども中心。」の保育を実現することです。
2017年からは先代が築いてきた運営基盤を引き継いで、さらに発展させるために東香会の理事長に就任しました。東香会は保育のほかにも、地域文化事業など多様な福祉サービスを提供する社会福祉法人です。これから将来ますます深刻化する少子高齢化の波の中で、保育だけに寄った社会福祉法人ではなく、広くトライできる法人に変えていく道筋を考えて実行する必要がありました。
理事長に就任してから現在までの点数を自分でつけると60点です。悔やまれることは高齢者向け事業への取り組みです。計画は立てましたが自分たちだけで事業を立ち上げるエネルギーが足りず実現できていません。一方、保育分野では渋谷や世田谷に新園を開設するなどして基盤を広げることができました。特に手応えを感じていることは、「保育+αの関わり」を実現させたことで、それをきっかけに保育者だけに留まらない保育の広がりができました。
わたしが副住職を務めている町田の簗田寺(りょうでんじ)は、里山の丘陵地の谷の間に建てられています。そういった土地は谷戸(やと)と呼ばれています。ここで大昔から培われてきた文化や伝統を未来へと引き継いでいく取り組みを2017年から始めました。
YATO PROJECT
“YATO” = 谷戸は、丘陵地が侵食されて形成された谷状の地形、そしてその土地に根ざす農業や生態系を指すことばです。このプロジェクトは東京都町田市の谷戸・忠生(ただお)地域を拠点に、長い時間をかけて形成されてきた土地の歴史や性質を知り体感する活動を重ねながら、今後500年間続く文化催事の構造を設計していこうとする試みです。
餅つきなど季節の行事や里山の木々の伐採手入れ、影絵や家具作りのワークショップ、さらにはこの土地の土を材料にした土器の楽器作りなどにも取り組んでいます。簗田寺の「大施食会法要」に併せて開催される「YATOの縁日」では人気の焼き菓子やパンなどの出店、音楽ライブも開催していて毎回大勢の方が遠方からもやってきます。
これらのYATOの活動を通して、たくさんのアーティストとのつながりが生まれました。さらに、嬉しかったことは、アーティストたちが地域活動や保育に関わり、中には東香会のスタッフとして一緒に働いてくれるようになったことで、その人数は10数名になります。各園の保育補助に入ってくれたり、キッチンで給食の調理を手伝ってくれたり、地域コネクターとして地域活動を進めてくれている人もいます。
渋谷東しぜんの国こども園の「small alley(スモール・アレー)」では、ミュージシャンのトクマルシューゴさんと共同でミチバタ音楽祭を開催するようにもなりました。併設されているsmall alley cafe(公益サロン)の初代店長はYATOの活動のボランティアスタッフに紹介してもらえました。そこからの広がりで、この春に簗田寺の横にCONZEN COFFEEとして焙煎所を始めます。ののはな文京保育園、成瀬くりの家保育園へもバリスタが出向いて出張コーヒー店として保育スタッフの休憩時間に楽しんでもらうなどもしています。
渋谷と世田谷ではアーティストによる写真展やイラスト展示などもしていたり、演劇系の人たちも東香会の活動に関わりたいと声をかけてくれたりしています。新園を音楽やアートのカルチャーが豊かな都会の真ん中に作った要素は大きく、狙い通りの効果が生まれました。これからは、都会での取り組みをきっかけに知ってくれた人々を巻き込んで、町田や相模原の郊外へと循環してくると思います。東香会全体の職員も刺激を受けるでしょうし、そのことで保育の中身も進化していくはずです。こういう風に保育士以外の人も、積極的に保育に関わりを持つ保育園は珍しいのではと思います。子ども中心の社会づくりはこういうところから始まります。
「創造的思考 Creative Mind」とは何ですか?
生まれたての子どもが成長する中で、創造的な発想の発芽が絶えず起こっています。子どもたちの日々の創造性は、人類の生み出してきた社会や文化に直結していると感じますし、わたしたちが暮らす現代は創造的な日々の積み重ねともいえます。とすると、大人になったわたしたちが、子どもたち、特に乳幼児の生活を深く知っていけば現代の社会が抱える課題を解決する糸口が見つけられるかもしれません。
ある日、保育園の窓から溢れる日光に照らされながら口をパクパク動かす4歳の子がいました。「何をしているの?」とわたしが尋ねると、「光を食べている」と教えてくれました。そのうちに、「窓の近くにはキラキラした光が存在している」という噂が子どもたちの間で広まりました。大人はそれを部屋に漂う「汚いホコリ」と呼ぶかもしれませんが、子どもたちには光の射す魅力に気がつき、眺め、さらにそれを体内に取り込もうとする発想力があります。わたしはこの光景を見たときにイギリスの音楽家デヴィッド・シルヴィアン「Approaching Silence」のアルバムジャケット写真(藤原新也/撮影)を思い出しました。すべての人類の文化は体験と感覚から生み出されます。それはこのような子どもの日常に溢れているのです
写真左:しぜんの国の4歳児が光を食べている。
写真右:デヴィッド・シルヴィアン「Approaching Silence」ちなみに、しぜんの国保育園の坐禅の時間にBGMとして流していました。
「創造的思考 Creative Mind」が大人にも重要な理由は?
生まれたての赤ちゃんは親から教わるでもなく、いろいろな世界を認識しようとします。AとBの異なる事象が起きて、そのモノや出来事を結びつけて認識するには創造的思考が欠かせません。それが、毎日一分一秒の中で延々と繰り返されて赤ちゃんは成長していくわけです。
そういった子どもの感覚が大人にとっても重要な理由は、大人の頭の中には過去の知識経験や固定概念で「知ったつもり」になってしまっていることが溢れているからです。しかし、それは「わかったと理解しているだけ」であって、頭の中でもう一度、AとBを結びつけて論理を作ることにはなっていないのです。創造的思考が機能していないということになります。
大人は創造的思考を駆使すれば、それまで「わかった気になっていた悩みや問題の本質を探りあて自ら解決する」ことができます。これは個人の毎日の生活をより良くすることに留まらず、現代の複雑な社会課題を解決する上でとても大事なことです。
創造性は全ての人間が持ち合わせている性質です。子どもが得意とする創造的な日々を大人が再発見することで、新しい文化や倫理は、わたしたち一人一人が創ることができ可変することができるのだという自信を社会全体が取り戻すことができます。わたしたちはいつでもわたしたち自身の手のひらで新しい価値を生み出すことができるのです。現在の日本社会は自信がない風潮が根付いてしまっています。選挙においても自分の一票では社会を変えられないと思っている人が多い。そんな中で創造的思考は自信を取り戻すきっかけとなり、背中を押してくれるはずです。
大人でも創造的思考を絶えずおこなっているのが芸術家や経営者です。彼らは作品作りや事業成長のために自らの頭の中での創造的思考を活用しています。そんな彼らは、創造的思考を「続ける」ことを最重要視していて、生産性や効率を上げることは重要だと捉えながらも自分がそれをやることに価値を置いていません。それよりも創造的思考に「全振り」しています。生産性の前に創造的思考があるのです。
芸術家や経営者など一部の人たちに限ったことだけではなく、不確定な世の中で理想を実現したい人にとっても創造的思考が必要です。情報に溢れる現代の中では、生産性と創造的思考がごちゃごちゃになってしまっています。どちらかといえば生産的思考の方が強くなり先にきてしまっているから、創造的思考をする大事な時間が取れなくなっています。
創造的思考の大切さはわかりましたが、大人にとって全振りするのは怖くないですか?
生産性から創造的思考に「全振り」することにリスクを感じる方も多いと思います。やったことのないことへの漠然とした恐怖感や、来月の暮らしや売上はどうするといった不安は誰にでもあるはずです。それでも、創造的思考の力を発揮するには一度は全振りしなければならず、そこから徐々に自分や環境に合った生産性の割合を決めていけば良いことです。
そこで大事なのは「遊び」です。遊びの中では誰もリスクや恐怖を感じないから、遊びの中で創造的思考に全振りしてみれば良いのです。だから、子どもたちは全振りすることができるのです。遊びの中で生きる時間が多いからこそ、創造的思考を続けられています。
生産性のためにバリバリ働くビジネスパーソンであっても、一旦は遊びの中で創造的思考に全振りすることは、遊びの中であればあくまでもそこで完結します。創造的思考を機能させた良い体験は、日常の生活の方へと持って帰ることができ、そこから生産性へと結びつけることもできます。
とはいえ、生活の中で生産性と創造的思考をバランス良く持つことは難しいことです。もしかするとリスクもあるから思い切れません。極端な例をあげれば、財産給与の全てを快楽に使ってしまうことは遊びではなく、それは単に散財であり愚かな行いです。つまりは、お金をかける貨幣価値の世界ではないところでないと、創造的思考への全振りはできないのかもしれません。ならば、生活や仕事が絡まないところで、全力で遊んでみることです。釣りが好きなら一日中やってみるのも良いし、泳ぐのが好きならば体力の限界の距離まで泳いでみるのも良いのです。いま、多くの人はスマホのゲームや仮想現実の中でそれをやっていますが、課金といった経済価値との交換で吸い取られる形になってしまっています。
創造的思考を働かせるにはトレーニングすることも必要なのですが、それよりも過去の子どものころの体験を思い出すことが大切です。なぜなら、大人になったわたしたちも子どものころはそれが自然にできていたからです。子どもたちと共に過ごすことで思い出させてもらえます。もし、園児のお父さんに「創造的思考を取り戻すために何をしたら良いでしょうか?」と尋ねられたら、「園に一日来て一緒に遊びましょう!」と答えます。子どもが遊べるブランコを一緒に作りませんかとお誘いするかもしれません。子どもたちや保育者のわたしたちと遊びながら過ごすことで創造的思考を取り戻し、次の日からの仕事への取り組み方も変わってくるはずです。
それには、しぜんの国のようなところでないとできません。なぜなら、しぜんの国の子どもたちは創造的思考を発揮しやすい環境にいて、創造的思考をもった人たちに見守られているからです。つまりは、クリエイティブマインド・ネイティブな子どもたちに囲まれればこそ、そこに来た大人も自然と影響されていきます。
紘良さんの考えるウェルビーイングはどんなものですか?
Well-being(ウェルビーイング)とは、心身と社会的な健康を意味する概念。決まった訳し方はなく、満足した生活を送ることができている状態、幸福な状態、充実した状態などの多面的な幸せを表す言葉である。瞬間的な幸せを表す英語「Happiness」とは異なり、「持続的な」幸せを意味するのがウェルビーイングだ。厚生労働省は、この言葉を「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」だとしている。
現在のようにトレンドワードになる前の2010年の園長便りで「これからは子どもたちが中心のウェルビーイングな社会を作っていくべきだ」と書いたことがあります。その当時、子どもの権利条約の議論が世界では活発になっていて、その実態を知るために東香会では北欧研修を実施して、個人的にもニュージーランドを訪ねました。そこではいろいろなことを体験しましたが、大きな気づきとして、ウェルビーイングは幸せが持続する天国のような場所ではなくて、生活や人生を続けていくことは山あり谷ありなので、それをちゃんと乗りこなしていくことがウェルビーイングであるということです。
先ほどの創造的思考にも関連してくるのですが、ウェルビーイングとは「思考を止めるな」ということでもあります。個人の中で、そして社会の中で、思考を止めるような圧力を排除していくことです。思考していくことこそ人間らしい生き方です。進化論の提唱者ダーウィンは、人間と他の生物の違いを、「人間は思考することによって望ましい方向へと意図的に環境を変え続けることができることだ」と言っています。
しぜんの国で育った子どもたちは、創造的思考を使うことが多いのでウェルビーイングな自分なりの世界を実現できています。その素地があるので、小学校、中学校へと進学して、大人になっても続けることもできると思います。より良い社会を作っていけるはずです。
東香会の保育で2023年に実践していくことは?
「保育園の中で、子どもたち自身が暮らしの倫理を創造することを深める」ことです。そのプロセスの中には大人や社会が学べることがたくさんあります。子どもとの暮らしから再発見できる創造性を、保育者以外の人たちにも伝えていくことを実践していきます。
暮らしの倫理の創造とは、「自分たちにとっての暮らしはこうゆうものだよね」というマナーを作っていくことです。ここでいうマナーとは食事の際のエチケットのようなものではなく、人と人の関わりの中での「共通の価値観」のことを指します。
例えば、背丈ほどもある大きな石の上から飛び降りることが楽しいという子どもの遊びに対して、ただ一方的に「危ないからやめなさい」と大人が決めつけるのではなくて、自分の能力によっては飛べるだろう、やっぱり引き下がろうという判断を子ども自身ができるようになってほしいです。東香会の保育者は反射的に一律のルールに基づいて止めるのではなく、子ども自身が判断できるまでに成長していないと感じれば怪我をしてしまうかもしれないので止めますが、子ども自身で判断できると思えば止めないと思います。
また、子ども同士が喧嘩をしている間に、すぐに保育者が介入して「お互いにごめんなさいと言ってやめなさい」と終わらせるのは、あくまでも大人が決めたルールです。しぜんの国の子どもたちは怒鳴り合いを続けた後に、「お腹が空いたから続きはご飯の後にしよう」とか、自身たちだけで考えて話し合いをしています。もちろん怪我になりそうな場合の喧嘩は保育者が止めますが、そうでない場合は、子どもが自分たちで調整できるようになり、次に喧嘩になりそうなシチュエーションになった時には、「一旦落ち着いて、座って話そうよ」といったことが子どもの判断でできるようになります。大人は警察ではなく当事者でもあるので考えを働かせ、争い事を暴力で解決しようということに落とし込ませない倫理を子どもたちに伝えていくべきで、それが大人の責任です。
保育の現場は、このような暮らしの倫理に気づかされるエピソードが溢れています。従来は、保育者の朝礼や保育研究者が集う研修会や専門誌の中だけで共有されるものでしたが、東香会では書籍やネットを通して保育業界の外の人々に対しても長年に渡り発信を続けています。2023年はそれをさらに広く濃く進めていき、多くの人々に保育に関心を持ってもらいたいです。
具体的には、2023年11月に東香会以外の法人に向けた研修事業を始めます。公益セミナーと呼んでいるもので、これまで東香会の内部で実施していた研修内容を、他の保育園の保育者にも共有するものです。また、保育以外の他業界に向けた発信も計画しています。夏には下北沢のボーナストラックでトクマルシューゴさんと音楽イベントを企画していて、その場に絡めれば保育者以外の人たちにも伝わるのではないかと考えています。コロナ前に町田のしぜんの国保育園の中で開催していた子どもと大人のための音楽フェス「サウンド園庭」も復活させようかと思っています。そこでは、子どもたちの暮らしの倫理のエピソードのポイントを保育者が解説したり、YATOの活動などをきっかけに保育に関わってくれたアーティストたちにも実体験を語ってもらったりしたいです。それを通して、普段は子育てや保育に関わりの薄い人たちにも「子ども中心の社会」について興味を持ち深めてほしいです。
さらに、子育て世代よりもっと若い人に向けたイベントも面白いのではないかと思っています。将来の進路に悩んでいる中高生を招いた保育園のオープンデイの開催や、インターンやボランティアとして保育体験の機会も増やしていきたいです。親になって初めて赤ちゃんに出会うのではなくて、親になる前のもっと若い時点で赤ちゃんに出会うと、慣れることもでき優しさも生まれるので、そんな機会を作っていきたいです。何十年前は小中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんが、弟妹を背負い面倒を見ながら遊んでいたという話を聞くと、コミュニティの中で年齢の離れた異年齢保育が成立していて、それぐらいまでに子どもの存在が社会に浸透していたのだと思います。
わたしは、これまで和光高等学校(東京都町田市)で「保育と教育」をテーマに講師をしていましたが、それが3月でひと段落して、4月からは大妻女子大学の家政学部児童学科で講師をする予定です。
保育以外では2023年にどんな活動を予定していますか?
地域活動としては、簗田寺の敷地内に東京都では珍しいお寺の宿坊「泰全(たいぜん)」をオープンします。現在はプレオープン中の、知足安分を大切にした精進料理レストラン「ときとそら」も本格スタートします。お寺の周りには、里山に育った草花たちを束ねる花屋「花綵-hanazuna-」やコーヒー豆の焙煎所「CONZEN COFFEE」、土地を結び風土をまとう創作お香「matoi まとい」が揃い、地域の人々が集う街づくりが始まります。
音楽活動としては、バンドCOINNのライブ活動は未定ですが、個人として春までにプロモーションビデオの作曲を頼まれています。こんな感じで2023年前半はバタバタしそうですが、合間をみてプライベートでは1週間ぐらい海外へ充電の旅にも家族と出かけたいです。中学生の息子がテニスに夢中なので、世界ランク1位で人格者としても知られるラファエル・ナダルが、故郷のスペイン・マヨルカ島に設立したテニスアカデミーに短期留学を考えています。バルセロナで6月に開催される、かつてはレイハラカミさんやYMOも出演したことのあるソナーミュージックフェスティバルに出かけられれば嬉しいです。
インタビュー:2023年1月下旬