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築40年超の旧園舎が再始動、東香会の原点がここにある。

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2022/10/14

東京・町田のしぜんの国保育園の敷地には、東香会の設立当初の1979年から2014年まで子どもたちが過ごしてきた旧園舎という建物が残っています。新園舎への移転に伴い、近年はしばしの冬眠のようにお休みしていましたが、ご家庭で子育てをされている方に向けた「子育てひろば」と地域の「子ども食堂」として、2022年10月から再活用が始まりました。

里山の傾斜を活かした2階建の園舎には、趣のある雰囲気が残っています。今回、積み重ねてきた時代の面影や痕跡を残しながら手が加えられ、当時の木材をサインや什器に再利用したり、床に里山の土を混ぜた材料を施したりと、あえて残す部分はそのまま残しつつ、トイレやキッチンなどは新しく快適に生まれ変わりました。

旧園舎は過去40年間に増改築を重ねて来ましたが、今後は使い方や機能を絞っていくことで、使わなくなった部屋や棟を減築しながら時間を掛けて再び里山の自然に戻していくという長期計画があります。

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旧園舎で保育士として働いていた経験があり、現在は東香会が運営する成瀬くりの家保育園 の施設長を務める早川朝子さんに、当時の思い出や再活用への期待についてインタビューしました。

旧園舎を訪れるのは久しぶりですよね?

旧園舎を訪れるのは11年ぶりです。ここに来る前に当時の写真を見返していたのですが、実際に建物に入ってからいろいろな細かいことを思い出してきました。

わたしは39年前に保育士になりました。学校を卒業後相模原の園に就職して、5年間の子育て期間を経て、2002年に東香会に転職しました。現在は、成瀬くりの家保育園に異動して12年目なので、10年ぐらいはこの旧園舎にいたことになります。

わたしが2年目に担当した5歳児の子どもたちが、20歳になってこの場所で同窓会を開催しているのです。また、大人になった卒園児が成瀬くりの家保育園に就職してくれて、一緒に働いたこともあります。こういうことは、継続してきたことのご褒美ですよね。

旧園舎で保育士をしていた当時の運動会での早川先生

当時の環境はいかがでしたか?

先ほど、旧園舎のまわりを歩いてきましたが、周囲の環境はあまり変わっていない印象でした。町田市忠生地域は谷戸(やと)といって、丘陵地が侵食されて形成された谷状の地形になっています。昔からこの土地に根ざした農業や暮らしがあり、現在では住宅も増えましたが、東京都とは思えないぐらい緑が溢れています。東香会で働き出した当時もあたたかな気持ちに包まれたことを思い出しました。子どもたちと近所の畑で野菜の収穫をさせていただいたり、薬師池公園まで往復6kmの道のりを歩いて遠足に出かけたり、お餅つきをしてご近所に配りに行ったりもしました。

旧園舎から園庭を挟んだ先には、現在のしぜんの国保育園の新園舎が建っています。その辺りは以前は急な崖に木々が鬱蒼と茂った森で、「冒険山」と呼ばれ子どもたちが遊び回っていました。子どもたちがどこにいるのかわからなくなるほどで、自分もしょっちゅう冒険山の上に登っては人数を確認していました。最初の頃は慣れなくて、特に暗くなりはじめの夕方が怖かったです。「夕方は山に行ってはいけない」というルールがあったほどです。

そんな森のような冒険山の環境でも子どもたちは全く平気で遊んでいて、驚くほど怪我はありませんでした。1歳や2歳の頃から木々をくぐったり、転がって降りたりしても大丈夫でした。園庭に出たらみんな真っ黒になりましたね。冒険山から園庭へターザンロープが張られていたり、砂場の周りで野焼きをして子どもたちが陶器を焼いたり、ついでに焼き芋を焼いたりと、毎日が自然に包まれていました。

旧園舎ではたくさんの動物も飼育していて、玄関の横には「クルル」というアライグマ、園舎横の飼育小屋のある「動物村」には鹿の「小梅ちゃん」、きつねの「コンちゃん」、孔雀の「くーちゃん」、あと、ヤギもいました。子どもたちにとって動物がいることは当たり前で身近な存在でした。4月に入園してきて慣れない子どもたちも、動物村に連れて行くと泣き止んで葉っぱをあげたりしていました。

旧園舎は斜面の形状に合わせて建築されているので、メインエントランスは2階にあり、1階にもホールや保育室があります。階段の上り下りを毎日するというのは、一般的には平らな園舎が多いので珍しいですよね。入園時には危なっかしかった子どもたちも段々と慣れて平気になっていっていきました。

室内の壁や床には木材がたくさん使われてあたたかな雰囲気で、どこの部屋からもテラスを通して園庭に出ることができ、たくさんの木々とつながっているようで印象的でした。保護者の方々も自分たちのおうちのように感じてくれていて、ソファーがあるラウンジでおしゃべりしたり、図書室でくつろいだり、そんな空間がたくさんありました。

1階のホールから見上げた、当時の雰囲気がそのまま残る階段。上が2階のメインエントランス。

旧園舎の外には煉瓦作りのモダンな建物「フクロウ図書館」があり、小学生のアフタースクールの場所として活用されていました。卒園児も気軽に来てくれましたし、地域の方々も立ち寄ってくれるちょっとした拠点になっていました。行事もよく開かれていて、わたしが一番好きだったのは秋の夜に子どもたちの作品を屋外展示するギャラリーでした。園舎から外階段を通って山の中まで灯りを並べた光景がすごく幻想的で、子どもたちも保護者も楽しんでいました。給食スタッフが園庭の釜でピザを焼いてくれたり、温かなスープを出してくれたりしたことを思い出します。

新たに再活用される旧園舎をご覧になった感想は?

2014年に新しい園舎に移った際には、さよならパーティのようなイベントもありませんでしたので、いま思えば8年間、ちょっと冬眠してお休みしていたような感覚ですね。再活用にあたってはいろいろな計画が考えられ、その経過は会議などで聞いていました。紆余曲折もありましたが、旧園舎が何かに活かされてほしいという思いはずっとありました。行政的な手続きや、新しいことをやるには時間が掛かることも理解していたので、その経過にそっと寄り添ってきました。ここに来て、本当に動き出すなという感じですね。

今回は程よい改装で残っているものが多く嬉しかったです。完全に新しく変わっていたら、親しみがなくて足を踏み入れにくかったかもしれないですね。残して活かしてくれていることが、ものすごく伝わるので、ここで子どもたちの声が再び聞こえるのは、今後の励みになるし、本来のあるべき姿に戻っていくのを感じます。ワクワク感があり、懐かしさ半分、嬉しさ半分という感じです。名称に「きゅうえんしゃ」という名前が残ったこともしっくりきました。東香会はここからスタートしているので、みんなの思い入れも強い場所です。

わたしが旧園舎で働き始めた頃は、「ものがたりメニュー」を外部に発信していた時でした。ものがたりメニューとは40年以上前から今でも続いていて、進化し続けている取り組みです。「いきいきのびのび楽しい食事・・・こどものちからで季節をたべる」を主軸に、たとえばグリーンピースごはんは「ジャックと豆の木ごはん」、ナルトが入った卵スープは「孫悟空スープ」など楽しく夢のあるメニューが多数あります。世間で「食育」が注目される前だったので、多くの見学の方をご案内しました。

 

食を大切にしてきた旧園舎ですので、いま再びキッチンが新しく生まれ変わり、「子ども食堂」としての役割を担っていくことが嬉しいです。また、「子育てひろば」として、地域や保護者の方が自然に来てくれる場所になることがありがたいし、わたしもそこに関わりたいと思っています。

インタビューは動画でもご覧いただけます。
https://youtu.be/HwJ7LqfU1Gs


フォトギャラリー
旧園舎には新しくなった部分と、時代を重ねた部分が混ざっています。現在は立ち入れない所もありますが、今回は写真でご紹介します。

レンガ造りの門には新たに付けられた「きゅうえんしゃ」というプレートが。

まるさんかくしかく、趣のあるデザインの外壁に蔦が絡まっています。

小さな椅子はサインに変身しました。

以前の事務所スペースの受付。

原木のオブジェは、かつて保育室内にあったものをここに移設。

「ののさまの電気 季節毎にタイマーの時間をチェックすること」

床は敷地内の里山の土を混ぜて新たに施工。土の床に木漏れ日が映えます。

ホールに残された古びたピアノ。壁のオブジェもかわいい。

旧園舎のテラスから園庭を挟んで現園舎を臨む、昔は冒険山という森が広がっていました。

居心地の良い畳が敷かれて生まれ変わった子育てひろば、はじめましての人でもきっと懐かしさを感じる空間です。

あえてペンキを塗り直さなかった壁に子どもたちは何を感じるのだろう。

新しくなったキッチン。ここから再び食を通した様々なつながりがはじまります。