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上町しぜんの国保育園第二回「オトナなナイト」 障害者就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の新澤克憲さんをお迎えして

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2019/07/31

7月27日土曜日、上町しぜんの国保育園で、第二回「オトナなナイト」を開催しました。「オトナなナイト」は、青山園長が企画する“大人限定”の座談会イベントです。今回のゲストは、近所の障害者就労継続支援施設ハーモニーの施設長、新澤克憲さん。「ハーモニー」は、精神障害をもつ幅広い年齢の方が集う作業所で、「間口を広く、敷居を低く」、「いたずらに人を評価しないこと」をモットーに運営されています。

登壇するハーモニー施設長の新澤さん

最初は全て手作業で作られていたという「幻聴妄想かるた」は、そこに集う人々の幻聴や妄想を、ユーモア溢れるイラストとともに“かるた”という形で共有するもので、テレビでも取り上げられるなど、各方面から注目を集めています。この不思議な名前の“かるた”は、どのような背景で作られたのでしょうか?


精神障害によって孤立してしまう人たち

はじめに、精神障害とは何か、また精神障害をもつ人たちには、どのような制度が用意されているのかご説明いただきました。キーワードとして出てきたのは、「障害の個人モデル」(医学モデル)、「障害の社会モデル」という言葉です。昔から、身体・精神を問わず、障害がある人たちには、「障害の個人モデル」をもとにサポートが行われてきました。つまりは、障害のある人も、できる限り自らの力で健常者と同じように生活できるようにしていく、という考え方です。たとえば、何らかの障害で階段が上れない人には、杖などを使って上がれるようにリハビリする、というやり方です。一方で、「障害の社会モデル」は、障害者を取り巻く社会のあり方に根本的な問題を求めます。先ほどの階段の例でいえば、健常者を前提とした階段ではなく、どんな人でも使いやすいスロープを作ろう、という考え方です。昨今、よく聞かれる「インクルーシブ」も、元を辿れば後者に基づいており、考え方が変わってきているそうです。

しかし今でも、精神障害のある人たちは、日本の既存の労働システムでは働く場所を得難く、そのために仕事や親しい人間関係も喪失し、孤立してしまうケースが少なくありません。新澤さんは、ご飯を食べにくる感覚で、必ずしも作業をしなくてもよく、いつ来てもOK、といったスタンスで、障害のある人たちが気軽に来れる場作りをしています。また、健常者の方にもその場を開いています。


今日も問題だらけ、“順風満帆”━「幻聴妄想かるた」とは

精神障害のある方の中には、そこにはないものを見たり、聴いたりするといった現象を体験する方が稀にいらっしゃいます。原因は様々といい、体調や環境によってはその程度が酷くなることもあります。“かるた”にして他の人の経験に触れることで、「こういう苦労があったのか」、「私も似たようなことがある」と共感しあい、孤立から救われる効果もあるといいます。幻聴や妄想に苦しめられ、突然失踪する人もいます。新澤さんたちは、「生きて帰る失踪」のためにはどうすれば良いかをミーティングで相談するそうです。ハーモニーで起きた出来事を素材として取り入れ、ハーモニーの人たちの記録として残す、という意味もあります。初版が発行されたのは2009年。全て手作業の受注生産で作り始め、500以上の注文があり、2年後には医学書院から出版されました。現在までに6,000部近く販売されています。そこからテレビ取材や、アート界隈の人たちにも注目されることとなり、全国的に知られるようになりました。世田谷発祥という障害者プロレス(!)へ参加する人がいたり、「マイノリティ先生」として障害のある人の実情を語る人がいたり、様々な活動に繋がっていきました。

ユーモラスなイラストが特徴的な「超・幻聴妄想かるた」

今では「超・幻聴妄想かるた」として第三弾が出版されており、全国の本屋さんやオンラインショップでも購入することができます。当事者である人たちが苦しめられてきたはずの幻聴・妄想が、イラストと言葉を綴った“かるた”となって立ち現われると、不思議とユーモラスな佇まいになり、「オトナなナイト」参加者の笑いを誘っていました。

最後に、新澤さんは3年前に「やまゆり園」で起こった凄惨な事件にも触れ、犯人の一方的な切り捨て、弱い者がさらに弱い者へ一方的に暴力を振るったこと、劇場型の報道とSNSを介した犯人へのヘイトに、もっともショックを受けたといいます。

”歯車はガチガチだと動かない 少し余裕があって動くんです” 仕事をすることについての1枚

世の中の“あるべきルール”や、結果ばかりが求められる環境、ある“線引き”から外れた人たちへの切り捨て。こうした動きは事件に限ったことではなく、私たちの身近にもある問題なのではないでしょうか。子どもがいる場所では、親御さんは常に「発達」や「成長」という言葉の下でプレッシャーを感じているでしょう。先生や大人が子どもを「おかしい子」にしてしまっている例もあるかもしれません。その場にいらっしゃった、あきるの市の認可外保育施設ウッディ・キッズ代表の溝口園長も、認可外としては何ともないことが、場所が変わればダメとされてしまうケースを紹介しました。毎日色んなことがあり、本人はいたって“順風満帆”。「問題」を問題として捉えてしまうのではなく、「それって何で問題なんだっけ?」、「誰にとっての問題なんだろう?」と捉え直してみる。みんなが窮屈にならないために、必要な視点かもしれません。


第二回「オトナなナイト」を終えて

子どもたちと日々を過ごしていると、ひとりひとりの子どもの心の現実ということがとても大事なように感じます。何か嫌なことがあったとき、子どもが「ママー!」と泣くのは、「途方に暮れているので、いちばん大切な人に会いたくなりました」ということです。その子に、「いまはママいないから、がまんね。もう◯◯ちゃん大きいんだからね」と言うのは、無意味ですし、あんまりです。「ママー!」と泣いているのだから、「こんなことになったら、ママに会いたくなっちゃうよね」と寄り添うこと。“隣にいる人が自分の気持ちを受け入れてくれる”、“この人はどうやら頼りになりそう”、とわかれば、子どもだって少しづつ心を開いてくれます。

ハーモニーさんの「幻聴妄想かるた」は、私達とは関わりのないものでしょうか。特別な状況に置かれた人たちの特別な営みでしょうか。「幻聴妄想かるた」には、ハーモニーさんに集った人たちの心の現実が綴られています。そしてぼくらも、子どもも、いつだって心の現実を生きているだけなのです。

上町しぜんの国保育園 園長 青山 誠


「幻聴妄想かるた」について

「幻聴妄想かるた」は、現在まで3種類発売されています。市原悦子さんの朗読が付いた第一弾の「幻聴妄想かるた」、新進の写真家、斎藤陽道さんが撮影した写真も楽しめる「新・幻聴妄想かるた」、そして、谷川俊太郎さんご推薦の言葉もいただいた、最新の「超・幻聴妄想かるた」。一般書店やアマゾン以外に、ハーモニーの特設ページからも購入できます。