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small alley cafe 2周年を迎えて これまでとこれから

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2021/04/05

渋谷東しぜんの国こども園が直営するカフェ、small alley cafeがこの春2周年を迎えました。保護者の方だけでなく、地域にお住まいの方や、周辺で働く方々などに広くご利用いただいています。渋谷・恵比寿・代官山の中間、大通りからは一つ入ったところに位置し、どこかゆったりとした時間が流れているこのカフェ。立ち上げから今日まで店長を担う三浦さんにお話を聞きました。


2018年の10月にプレオープン、2019年4月にグランドオープンし、最初はネオンサインや植物もなかったですし、お店の見た目もだいぶ変わりましたね。今日は2周年の節目に、これまでとこれからについてお話いただこうと思います。三浦さんはどういう経緯で店長さんになられたんでしょう?

2018年プレオープン前の立ち上げ期間から関わっているので、もう3年半くらいになります。お店ができる前は法人本部がある町田に通っていたのが懐かしいです。YATO*のボランティアをしていた友人からお仕事を紹介してもらったのがきっかけで、店長になりました。

*YATOとは、町田市の谷戸・忠生(ただお)地域を拠点に、長い時間をかけて形成されてきた土地の歴史や性質を知り体感する活動を重ねながら、今後500年間続く文化催事の構造を設計していこうとする試み。しぜんの国保育園を運営する社会福祉法人東香会の地域文化事業。詳しくはこちら

そもそもお店もできていない状態。こども園が運営するカフェ、ということや、店長さんという責任あるポジションですが、迷いはなかったのでしょうか?

大事な友達を経由しての紹介だったので、迷いはありませんでした。当時勤務していたカフェが1年間限定で運営される店舗で次に何をしようかなと考えていた時だったので、タイミング的にも合っていたと思います。

実は製菓の専門学校を卒業してすぐ、ある会社で店長代理としてレストランの立ち上げに関わったことがあったのですが、諸事情により退社してしまい、悔しい思いをしました。その友人にも色々相談していて、当時の私の気持ちを知った上で声をかけてくれたんです。そんな友人からの紹介でしたし、やりたいことにも近かった。「やってみたい!」という気持ちの方が強かったですね。

3年間を笑顔で振り返る三浦さん。


三浦さんは立ち上げの際はどんな形で関わっていたんですか?

私はこれまでもカフェでお店に立つという仕事をしてきていたので、エスプレッソマシーンや冷蔵庫がどこにあるといい、といった感覚が自然と身についていたんです。必要な機材やドリップコーヒーの器具を決めたり、お店の導線について意見を出したりしました。

製菓専門学校に通われていたということで、メニューにもその知識が活かされていると思うのですが、お菓子ではなくコーヒーの道に進もう、と思ったのはなぜですか? 

実は入学する前からそう決めていました。高校を卒業する直前に、コーヒーの焙煎所でアルバイトをさせていただいた時に、コーヒーの道に進もう、と。お菓子作りをしたいというよりは、製菓衛生師の資格を取って、必要な時に必要な知識を生かせるように通っていました。コーヒー屋さんに行って人脈を作る、といったこともしていました。業界で有名な人に会いに行って、お話を聞いて。

授業に欠席して色んなお店に行っていたら、ある時先生に呼び出されて、「このままだと卒業できないぞ」、という話をされてしまって…。でもその日はどうしても行きたいカフェがあり、その場で直談判しました。熱意を伝えたら最終的には先生が折れて、「行ってきなさい」と 笑。アライズコーヒーロースターというお店のお豆が美味しくて、印象に残っています。その時は色んなお店に行き、色んな人に話を聞くということが自分にとってとても重要だったんです。その代わりにレポート課題を提出して欠席分を補完し、無事に卒業しました。

すごいですね。直談判してまでお店に行くって 笑。

small alley cafeでも以前、甘茶を使った桜ラテや、Moegiという野菜のパウダーを使った抹茶のようなテイストの期間限定ドリンクなどを提供されていましたね。甘茶は花祭り*に関連しているし、Moegiも見た目のせいで廃棄されてしまうはずの野菜をパウダーにしている、というストーリーのあるプロダクトです。

Moegiの場合は、たまたま来てくださったお客さんがその製品を作っていらっしゃる方で。素敵だな、すごいなと思っていたんですが、実際に味わってみて、これが野菜とは思えないという感動がありました。野菜嫌いの子どもでも飲めるんじゃないかな?と思い、使ってみました。

最近気づいたんですけど、夏場に水出しコーヒーは出していたのですが、それ以外で今まで作ってきたシーズナルメニューにはコーヒーメニューが無くて。子どもが飲めないメニューが無いんです。自然と子どもも大人も美味しいと思ってもらえるものを作りたい、と考えているのかもしれません。この春の新しいメニューも最近毎日考えていますが、メニュー考案は面白い仕事です。

*灌仏会(かんぶつえ)とも。釈迦の誕生を祝う仏教行事で、甘茶が振舞われる。渋谷東しぜんの国こども園を運営する東香会は、町田市にある東向山簗田寺をルーツとしており、理事長は副住職も務めている。たまたまカフェで春の行事について立ち話をしていたところから甘茶を使ってみようという話につながった。

子どもたちの存在も大きいかもしれないですね。子どもたちが毎日夕方になるとお迎えの保護者の方と一緒にお店に来てくれたり、散歩の途中で手を振ったりしている光景を見ます。

私は保育士ではないので、“保育士ではない大人”として、素のままの自分で接していますね。普段通りの言葉で話しています。

こども園の子どもたちが、帰りに立ち寄って、気分転換して帰っていく、ということもあるみたいですが。

そう思ってくれていたらありがたいです。自分ではそういう場所だという自覚はあまりなくて。明らかにテンションの低い子がいれば話しかけにいくこともありますが 笑。素で接しているので、たまにこの言葉かけで大丈夫だったかな?と思うこともあるのですが、保護者の方々も寛容でいてくださってると思います。

園のイベントにも関わっていますね。

そうですね。こども美術館*では、カフェの壁に子どもたちの作品を飾ったり、先日のsmall alley fes*では、バタフライピー(青色の色素が出る植物)とレモンゼリーを使って色が変わるワークショップを企画して動画にしました。お家で真似してくれた保護者の方もいらっしゃいます。

*こども美術館は、年に1回渋谷東しぜんの国こども園で開催されるイベント。こども美術館では子どもたちの作品とその思考のプロセスを展示、一部の作品は一般の方にも公開している。
small alley fesは職員・保護者・子どもたちが混ざりあい、ワークショップ、音楽や食などを通してその1日を楽しむ。2020年度は、感染症対策のため動画を配信する形で開催。

バタフライピーとレモンゼリーのワークショップの一幕


この2年を振り返ると、新型コロナ感染症の影響は大きいと思います。これに関連して、今日にかけての変化や、お店で気をつけていることなどを教えてください。

最近は地域の方々が来てくださっている印象があります。より地域密着になったというか。

席をこまめに消毒するとか、手指の消毒をするとか、基本的な衛生管理は気をつけていますが、マスクをしての接客にはいまだにストレスを感じています。口元が見えないことで、無表情に見えるんじゃないかな、と思っていて、大人や子ども関係なく接客の難しさを感じますね。喋らないシーンでは、あえてマスクをとって笑っているところを見せることもあります。

基本的にいつも笑っているんですが、ちゃんと安心してもらえているかどうかが気になります。ちょっと忙しくてバタバタしている時も、本当は笑顔でいるのにマスクで無表情に見えて、行動までツンツンしてるように見えたら嫌だな…って。私も損した気分になりますし 笑。

そういう心がけ一つひとつがこの場所の雰囲気を作っているような気がします。三浦さんの気持ちの変化はありましたか?

良い意味で、落ち着いたと思います。1年目は気合が入ってあれもこれも!とエネルギーを外に向けて出していました。追い詰められる状況が幸せ、と思っていたし、大変だというところ自体にやりがいを感じていた。自粛期間中家に籠もったときに、そういう気持ちがリセットされました。闇雲にあれやりましょう、これやりましょう、というのではなく、今の状況を考えて、できることを見出すというスタンスになった気がします。

【small alley cafe】店長のゆるすぎエアロプレス検証!
常連さんを含むお客さまとの繋がりを持てるようにと、自粛期間中に制作。

この2年間、お仕事のモチベーションになっていることは何でしょう?

毎日来てくれるお客さんがいることがまず基本的なモチベーションになっています。以前別の仕事ですごく暇な時間帯に勤務していたこともあって、いらっしゃるお客様が2、3人…笑。毎日来てくださるお客さんが一定数いらっしゃるということは、ここに自分が存在している意味があるんだな、と感じますね。

お客さんとの会話も楽しみです。体調など自分のコンディションもあるので、お店を締めた後に疲れが出ている時もありますが、寝ることとお風呂に浸かることで解消しています!元々は茅ヶ崎に住んでいたので、海の存在が大きかったんですが、最近引っ越して、お風呂で水面をずっと見ていると落ち着く…、ということに気付きました 笑。

 

毎日ボードにお客さんへのメッセージを書くところから1日が始まる。


お客さんにはこのカフェをどう思って欲しいですか?

家です!

スタッフの数が2人だから、次いらっしゃる時もいずれか2人に会うということになると思います。2回目に来てくださるとすごく嬉しいですね。ついつい、「なぜまた来てくださったんですか?」と聞いてしまうことがあります 笑。

静かに過ごしたい方、お話したい方がいらっしゃるので、お客様の空気をよくみるようにしていますね。

3年目を目前に、今後やっていきたいことはありますか?

去年やろうと思っていたいろいろなイベントが出来なかったので、新型コロナ感染症の状況を考えつつも、ライブなどのイベントをやりたいです。色んなお客さんが来てくれる。そのお客さんたちに参加してもらえるようなイベントが出来たらいいなあと思っています。

プライベートでは、お店に置いている小山暁子さんのカップを見てから陶芸をやりたいなと思っています。元々物を作ることが好きなので。

パンデミック前、カフェに併設するスペース、BUTTERで友人と自身が撮影した写真を展示した時の様子。


最後に、お知らせすることがあれば教えてください。

今後カフェのグッズ展開やワークショップも計画しています。スタッフの小井土がやっている「まざるラジオ」もぜひ聞いてください!インスタはほぼ毎日アップしているので、フォローしていただけたら嬉しいです。

まざるラジオ:ほぼ毎週日曜配信中。Apple PodcastSpotifyなどでお好きな時間にお聴きいただけます。InstagramのダイレクトメッセージとGoogleフォームでお便りも受付中。詳しくは配信ページにて。

small alley cafeの公式Instagram@smallalleycafe